研究概要 |
前年度に引き続いて頭頸部領域腫瘍の内,舌癌症例を対象として小線源治療の晩発性障害の臨床的実態調査と容積一線量関係の判別分析を行なった。臨床的実態調査はラジウム針(Ra)のイリジウム線源(Ir)による治療例の晩発性障害である粘膜潰瘍と顎骨障害について行ったが,得られた結果は,RaとIrは同一病期に対してはほぼ等しい治療効果が得られているが,小線源単独治療の場合,粘膜障害,顎骨障害ともにIrの方が発性頻度が高く,かつ程度もやや高度のものが多くみられている。すなわち,粘膜障害,評価可能例に対する頻度は,小線源単独の場合,Ra14%に対しIr43%,外照射併用ではRa46%,Ir31%で外照射併用ではいづれも高頻度に出現していた。顎骨障害:小線源単独ではRa3%:Ir24%で外照射併用ではRa39%:Ir38%であった。 外照射併用では両者とも発生率が高く,線量配分の考慮が必要であるが,小線源単独でIrに障害発生率の高い要因は,刺入面積の大きいこと(線源配列の問題),線量評価の問題が考えられた。これらの問題の解決の一助として,まずRa単独1平面刺入例を治療結果から治癒,非制御障害の3群に分け,それぞれの線源配置から三次元的に線量分布図を作成して容積・線量ヒストグラムを求めて判別分析を行なった。その結果上記3群のヒストグラムには明らかに差が認められ,これらの曲線から数式化によって求めた各群間の判別分析から,それぞれの群で60〜80%の正診率を得た。すなわち治療開始の小線源刺入の時点である程度,予後の推測が可能となった。今後,Ir症例についても上記の方法で判別分析を施行して小線源治療可能比改善と治療の基準化への一助とする必要がある。
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