近年呼吸器X線診断学の進歩には著しいものがある。それを支える要因として撮像機器や感光材料の改良がある。特にX線CTの解像力の向上には瞠目すべきものがある。これらによって病態のより精密な描出が可能となり、それと共に肺標本の観察に基づく画像・病理対応の研究の進歩も見逃がせない。我々は昭和62、63年の両年に渡り肺末梢構造の基本的単位である2次小葉に着目し、これが各種のびまん性肺疾患の病態解析に重要であることを証明し、さらに2次小葉そのものの構造についても独自の研究を行なった。以下研究成果を要約する。 1.びまん性肺病変のCT像とその病理学的背景 高分解能CTの導入により剖検肺標本で認識される肉眼所見の一部が臨床的に観察可能となった。その代表例が小葉間隔壁による病変の境である。これが見易い疾患として小葉性肺炎、肺結核、肺胞蛋白症、びまん性肺胞領域損傷(ARDS)、BOOP、好酸球性肺炎、肺水腫、過敏性肺臓炎等が挙げられる。いずれも病変部が0.5〜2cmの直線的境界で区切られ健常部とのコントラストは良好である。肺胞性、間質性の両方のタイプの疾患で認めた。 2.肺小葉の構築について 肺の2次小葉には現在2つの定義があり、どちらも臨床的に有用であるが混同されて使われている。我々は剖検肺標本のスライスを連続的にトレースし、小葉間隔壁で定義されたMillerの小葉と細気管支分岐形式によるReidの小葉の相互関係を明らかにした。それによるとMillerの小葉は0.5〜2.0cmの大きさで中に複数のReidの小葉を含んでいる。そしてReidの小葉内の細葉数は3〜5個であるが、Millerの小葉内には3〜20数個の細葉が含まれることが証明された。
|