研究概要 |
近年呼吸器X線診断学の進歩には著しいものがある。それを支える要因として撮像機器や感光材料の改良がある。特にX線CTの解像力の向上には瞠目すべきものがある。これらによって病態のより精密な描出が可能となり、それと共に肺標本の観察に基づく画像・病態対応の研究の進歩も見逃がせない。我々は昭和62,63年の両年に渡り肺末梢構造の基本的単位である2次小葉に着目し、これが各種のびまん性肺疾患の病態解析に重要であることを証明し、さらに2次小葉そのものの構造についても独自の研究を行なった。以下その成果を要約する。我々は過去10年間遂行して来た剖検肺の観察により肺の2次小葉と各種病変の進著が重要な関係を持つことを認識して来た。例えば炎症性病変が小葉間隔壁で阻止され隣接する健常小葉と明瞭な境を形成することは良く知っていたが、これが実際の臨床画像で描出されるかどうか不明であった。ところが高分解能CTにより類似の所見が細菌性肺炎、肺結核、肺梗塞、肺水腫、過敏性肺臓炎、DAD、BOOP、肺胞蛋白症で見られることが確認された。これらの疾患と対称的にUIPでは病変が小葉内で斑状に分布することを反映して小葉境界は明らかとならない。一方DPBも小葉中心部に粒状病変が形成され、それがCTで描出されることが判明して以来我々の研究にとり重要な疾患となっている。ところで肺の2次小葉には現在2種類の定義があり、これらが混同されて用いられている。Millerの小葉は小葉間隔壁で境され0.5〜2cmの大きさがあり中に複数のReidの小葉を含むことが分かった。そしてMillerの小葉に含まれる細葉数は、従来多くのテキストが3〜5個と誤まって記述しているのに反し3〜20数個と幅があることを証明した。以上の研究により異なる立場から定義された2つの2次小葉はそれぞれに特徴があり、臨床画像の解析には両者とも有用であると結論した。
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