研究概要 |
ラジオアイソトープにて標識したモノクローナル抗体が特異的に腫瘍に集積することを利用して, 腫瘍と描画する方法が有望視されている. しかし, ^<111>Inや^<67>Ga標識抗体を投与した場合には肝臓への非特異的集積が高い欠点がある. ^<67>Ga, ^<111>Inはそれ自身も腫瘍, 肝臓に集積し, これらの機序には主に鉄蛋白質が関与している. この事を踏まえた上で, 本研究は以下のように行なった. 1.^<111>In, ^<67>Ga標識抗AFP抗体とAFP産出の肝癌細胞(NoE, PLC)とを培養し, 細胞に取り込まれた^<111>In, ^<67>Gaの動態を検討した. ^<111>In, ^<67>Ga抗体のいずれもが抗原AFPと強く結合し, これらは比較的安定であった. しかし, 培養の時間が長くなるにつれて, 抗体から^<111>Inや^<67>Gaが遊離し, 培養液中に含まれるトランスフェリンと結合した. 2.上記の肝癌を植えたヌードマウスに^<111>In^<67>Ga標識抗体を投与し, 血液, 肝癌, 肝臓中の^<111>In, ^<67>Gaの動態を検討した. 標識抗体はNoE肝癌に取り込まれたが, 比較的大きく成育したPLC肝癌には抗体は特異的には集積しなかった. NoE担癌マウスの血液中では^<111>In, ^<67>Gaとトランスフェリンとが結合していたが, 肝癌, および肝臓ホモジネート中では各々, 異なる蛋白質と結合しており, 現在, この蛋白質の同定を進めている. PLC担癌マウスでは, ^<111>In, ^<67>Gaの血中クリアランスが遅く, また, 抗体-抗原の結合体が血中に存在していた. 3.培養液中に鉄キレート剤, デスフェラールを添加して, 1と同様の検討を行なった. デスフェラールの濃度が2ng/mlでは, いずれの細胞の生育にも影響を与えなかったが, 細胞中の放射能は低下した. クロマトグラフィの結果からは抗体の取り込みは充分行なわれていることが確認され, デスフェラールの存在下においても安定な^<111>In, ^<67>Ga標識方法を検討中である.
|