研究概要 |
腫瘍内の低酸素細胞の存在が放射線抵抗性の主因であるといわれている. 人工血液としてすでに使用されているPerfluorochemicals(PFCと略, 実験には, これのemulsionである20%Fluosol-DAを使用)をCarbogen(95%O_2+5%CO_2)吸入下に用いてin vivoにおける放射線増感効果を調べた. (1)腫瘍局所PO_2の変動:実験腫瘍としてはRIF-1腫瘍を用い, 8-10mmになったものを使用した. 局所腫瘍内酸素分圧測定には, ガラス微小電極を用い, ポーラログラフ法により測定した. 一般に使用した腫瘍内のPO_2は, 0〜25mmHgと低いが, Carbogen吸入により50mmHg前後に増加した. その時にFluosol-DAをone shotで尾静脈より注入し, 経時的にPO_2を測定すると腫瘍の部位により種々異り, PO_2が急速にますものから, 比較的にゆるやかに増加するものまで色々であった. Fluosol-DAのみではほとんど変化がみられなかった. 腫瘍局所PO_2の色々の部位での平均をとると, 腫瘍のみでは12.9mmHg, Carbogen吸入のみ39.4mmHg, Fluosol-DAのみ20.5mmHg, Fluosol-DA+Carbogen79.5mmHgとなった. (2)放射線増加効果;X線照射線量と腫瘍治癒率(%)との関係を調べた. Carbogen+Fluosol-DA群に放射線増感効果が認められ, これからTCD50(50%治癒線量)を求めた. 一方, 正常組織の障害として皮膚スコア法で調べた. 増感効果は腫瘍に比べてきわめてわづかであることがわかった. 以上について放射線増感率(dose modification factor;DMF)を求めた. Carbogenのみでは, 皮膚反応は, DMF1.13±0.08であり, TCDSoは, 1.22でTherapentic Gain(TG)は, 1.08±0.08であった. しかし, Carbogen+Fluosol-DAでは皮膚反応はDMF1.15±0.12と小さく, TCD50では, 1.47となり, TGは1.28が得られた.
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