研究概要 |
正常者および各種骨疾患患者について, 橈骨および腰椎の骨塩量を光子吸収法により定量すると共に, カルシトニン, PTH, 1,25(OH)_2などのカルシウム調節ホルモン濃度の測定を行った. 1.加齢に伴い, 腰椎および橈骨の骨塩量は低下したが, 特に腰椎の低下が著名であった. また, 女性は男性よりも骨塩量の低下は早期に始まることが示され, 閉経という事実が大きな影響を与えることが示唆された. 2.老人性骨粗鬆症については, 胸・腰椎の圧迫骨折を有する症例では圧迫骨折のない症例に比べて腰椎の骨塩量は有意に低下を示した. このことは海綿骨が主体である躯幹骨を測定対象に用いることの重要性を示唆している. 一方, 橈骨の骨塩量や各種カルシウム調節ホルモンのレベルに関しては, 両群間には差がみられなかった. 3.慢性腎不全症では, 橈骨の骨塩量の低下を示す症例が大部分であった. 他方, 腰椎の骨塩量については, 2次性副甲状腺機能亢進症が軽度な症例では増加を, 高度な群では低下を認めた. これらの知見は, 今までに報告されておらず, 末梢骨と躯幹骨でPTHの反応性が異なる可能性が示唆され, 腎性骨異栄養症の骨病態を解明する上で貴重な知見であると思われた. 4.ステロイドの長期投与中の症例では, 投与期間が長いほど腰椎の骨塩量は低下を示したが, 橈骨の骨塩量に関しては差はなかった. したがって, ステロイド投与時にしばしば経験される骨折の予知や予防には, 腰椎の骨塩量を指標として評価することの有用性が示された. 5.現在, 骨形態計測を行っており, 今後, 骨塩量やカルシウム調節ホルモン濃度と骨形態計測のパラメータとの関連を検討し, 老化に伴う骨粗鬆化や代謝性骨疾患の骨病態を解明する予定である.
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