研究概要 |
1.片側前頭葉皮質破壊ラットに覚醒剤(ヒロポン)3mg/kgを投与すると穏やかな健側への回転運動が生ずる. スルピリド15mg/kgを投与したあとヒロポンを投与すると, この回転は破壊側へと逆回転になるという所見は既に予備的に得ていた. 今年度は, 例数をふやしこの現象を確認するとともに, ハロペリドール少量ではこのような現象が認められないという所見を得た. この結果は, 我々のこれまでのドパミン代謝回転の結果同様, 少量のスルピリドが前頭葉皮質ドパミンに優先的に作用することを示す新たな所見である. 2.ラットを4群に分け, そのうち3群に, 1日量としてヒロポン6mg/kg, スルピリド15mg/kgまたはヒロポン6mg/kgとスルピリド15mg/kgの併用投与を反復して行なった. 残りの1群は対照として生理食塩水を投与した. 反復投与は1日1回14日間行なった. 反復投与終了10日後にヒロポン3mg/kgを投与し, ブラインドの観察者2名で常同行動を5分ごとに評価した. その結果, スルピリド反復投与群と生食対照群では常同行動は全く出現しなかった. ヒロポン反復投与群とヒロポン・スルピリド併用反復投与群はともに常同行動が出現し, この2群の常同行動の程度に差異は認められなかった. この結果は, 研究立案時の予測に反し, スルピリドによる前頭葉皮質ドパミン遮断による逆耐性現象形成への影響がないことを示すものであった. 3.ストレスをヒロポンのかわりに反復負荷して2と同様の研究をするためドパミン代謝を指標として, 現在, ストレスの種類と強度を選択中である. 前頭葉皮質ドパミン代謝回転のみ選択的に亢進させるストレスを選択し条件設定することが研究の鍵となるからである. 拘束ストレスを加えて測定したこれまでの結果では満足すべき条件が得られないため, 現在, ラット脚への電気ショックに種類をかえて, 適切な条件を求めている段階である.
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