研究概要 |
本年度は薬物惹起性のラットの多動状態と常同行動における脳内ドーパミン代謝について検討を行なった. 薬物は妄想型分裂病や躁うつ病の患者の尿中で異常値が報告され, アンフェタミンと構造式が類似しているβフェニルエチルアミン(PEA)を用いた. 多動状態の測定にはラット行動測定装置(ON-3420)を用いた. (1) PEA10〜50mg/kgを腹腔内に1回投与すると10mg/kgの投与量で多動状態が出現し, 20mg/kgで最大となった. PEA20mg/kgを14日間反復投与したラットで線条体のドーパミン受容体における変化について検討したところ, ドーパミン2結合部位と考えられる^3H-スピペロン結合とドーパミンの取り込み部位を反映すると考えられる^3H-マジンドール結合については変化を認めなかった. (2) PEAは投与量が40mg/kgを越えると常同行動が顕著となる. PEA50mg/kgを反復投与し, ラットの常同行動と脳内ドーパミン代謝について検討した. 常同行動はPEA注射7日目に最大となり, この状態は14日目まで持続した. この状態において, ラットの線条体ににおけるドーパミン代謝産物の測定を行なったところ, 常同行動が最大となるPEA投与17分後にジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)の減少が, また, 常同行動が消失したPEA投与60分後にはホモバニリン酸が有意な増加を示した. これらの結果からPEAは, 脳内ドーパミン代謝に変化を与え, 常同行動をひきおこすが, 多動状態においては, ドーパミン2受容体とドーパミン取り込み部位には変化を与えない可能性が示唆された. 次年度は, 多動状態に対する躁うつ病治療薬について行動薬理学的ならびに神経化学的研究を行なう予定である.
|