研究概要 |
これまでの研究で長崎、上海、ソウルの各センターにおいて各国の患者に対して、共通の精神医学的"道具"であるPSE,HamiltonRating Scale for Depressionといった症状評価尺度やICD-9,DSM-IIIといった診断基準を用いれば、各センターにおいてほぼ一定の症状評価及び診断が可能なことが確かめられた。 これらの結果を得て各センターの外来部門を受診する新患について一定のScreening Scheduleを用いて各センター100名(ソウルに関しては111名)の対象者を選択した。 これらの対象者の収集に各センター約6カ月を要したが、その期間が年全体の受診患者の動向と較べて偏りがないことを確かめて次のような解析を行った。 この対象者の中でうつ病圏疾患(躁うつ病(ICD-9:296)、神経症うつ病(300.4)、抑うつ反応(309))と診断されたものは長崎57例(57%)、上海51例(51%)、ソウル55例(49.5%)とほぼ一定していた。 しかしうつ病圏疾患の内訳をみた場合、長崎・上海では躁うつ病(両極型、単極型)が約6割を占めたのに対して、ソウルでは神経症うつ病が約8割を占めており、各国において病像の違いが大きいことがわかった。 従来の内因性うつ病に相当する群と神経症範疇に属するといわれる神経症うつ病群のHamiltion Rating Scaleによる症状比較では長崎ではその両者が症状学的によく峻別されていたが、上海ではさほど両者の差は明らかではなく、中国に多いといわれる「神経衰弱」といった概念も含めて更に検討を要すると思われた。 またうつ病にともなう身体症状に関してはソウルにおいて出現頻度が高かった。
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