ポリ(A^+)ポリメラーゼは、細胞内の巨大RNA分子(hnRNA)の転写後において、ポリ(A^+)鎖の延長に関与し、細胞核上清に存在するI型と、クロマチンに結合し、ポリ(A^+)鎖の合成開始に関連する結合型(II型)との2種類の存在が知られている。マウス脳ホモジネートから遠心分画法によって、核画分と細胞核上清画分とを分離した。両画分を硫安処理した後、透析し、ホスホセルローズとDEAE-Sephadoxカラムとを用いてそれぞれ精製した。全体として、I型の酵素活性はII型の約5倍の活性があった。I型では、生後28日より週1回の発作を誘発させたEl(+)マウスの活性は、生後一度も放り上げ刺激を与えず、発作を誘発していないEl(-)マウスや発作非感受性ddYやC_<57>BLマウスなどより間歇期で高い活性を示した。他方、II型の活性は、El(+)マウスではEl(0)やddYマウスより低かった。このことはEl(+)マウスではmRNAへのポリ(A^+)添加の開始が十分に起らず、そのため間歇期でも完成したmRNAの合成が低いというこれまでの我々の結果ともよく一致するものである。発作後の変化では、II型の活性は、発作直後に、急速な低下を示し、間歇期の75%となったが、その後15分で正常値まで回複した。この結果はEl(+)マウスのII型活性が、間歇期でも他のマウス群より低く、発作によりポリアデニィレーションが顕著に阻害されるという以前の我々の報告とも一致するものである。一方、I型の活性は発作によって、ポリ(A^+)鎖の伸長は、発作によってやや増加する傾向活あるものの、有意ではなかった。したがって、ポリ(A^+)鎖の伸長は、発作によってそれほど大きく左右されないことを示唆している。今後はポリ(A^+)ポリメラーゼII型sabmitの合成に及ぼす発作の影響について、検討を加え、ポリアデニレーションに及ぼす発作の作用機序について考察を加えたい。
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