発作間歇期におけるElマウス脳を、大脳皮質、白質、小脳、海馬、中脳、間脳などの6部位に分け、それぞれのポリ(A^+)ポリメラーゼ活性を測定した。その結果、海馬が最も高く、次いで大脳皮質、中脳、間脳、白質、小脳の順に活性の低下がみられた。このことは、海馬が発作感受性に最も密接に関与していることを示唆するものである。発作非感受性のddYマウスや生後一度も発作を誘発させなかったEl(-)マウスの海馬についてもEl(+)マウスと同様その活性を測定したが、有意差は認められなかった。El(+)マウス海馬では、この酵素活性が発作中に低値となり、間歇期の65%に達した。しかし、発作後30分で間歇期のレベルに回復した。このことはElマウス海馬の急速なホメオスターシスを示唆するものである。次に、ポリ(A^+)ポリメラーゼを細胞核上清型(I型)とクロマチン結合型(II型)とに分離・精製し、その活性を比較した。I型は常にII型より約5倍の高い活性を示した。EL(+)マウスの型は、El(-)やddYマウスより高い活性を示したが、逆に、II型の活性はEl(+)ではddYより低かった。II型の酵素はクロマチン内でのmRNA合成に際して、nnRNAの3'-末端にポリ(A^+)を添加する最初の段階に関与するもので、El(+)マウスではmRNAへのポリ(A^+)添加が十分に起らず、そのため間歇期でも完成したmRNAの合成が低いというこれまでの結果と一致するものである。II型では発作直後にその活性が低下し、間歇期の75%になっているかが発作後15分では正常値まで回復している。このことも上の結果と一致している。なおI型の活性は発作中に有意の変化がみられなかったことは、この酵素が関与するポリ(A^+)鎖の延長は、発作によって大きな影響を受けないことを意味している。今後はII型subunitについて検討を加え、ポリアデニレーションに及ぼす発作の作用機構を明らかにしたい。
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