本研究の目的は超高齢に達した人々の(1)精神機能、(2)精神の正常老化と異常老化、つまり痴呆との相違点、(3)精神の正常老化に関与する条件、および(4)人格特性を明らかにすることであり、さらに昭和48年に当研究所で行われた結果と可能な限り比較することである。これらの目的に従って、一定の調査票を用いて都内に在住する100歳(研究初年度は100歳以上も含む)老人のなかで同意の得られた老人およびその家族を対象として精神科医と心理士による精神医学的および心理学的な在宅調査を行い、可能な限り精神機能測定検査も行った。昨年度は214人を対象として訪問調査を行うことが出来た。 今年度は昭和63年3月末日現在100歳となる都内在住の高齢者93人(男26、女67)を対象として昨年度と同様の調査を行った。このなかで47人(在宅34、施設13)は訪問調査が可能であり、21人については電話で可能な範囲で調査を行った。在宅および施設入所中の対象のなかで評価が可能であった45人について臨床痴呆尺度で痴呆の程度を評価した結果は、痴呆なし6人、疑い10人、軽度痴呆7人、中等度痴呆15人および高度痴呆7人であった。男女ともに中等度痴呆の占める割合が最も多かった。日常生活動作機能では全体で68人が評価可能であったが、そのうち寝たきりあるいはほぼ寝たきりは25人(36.8%)であり、家の中では自由に動けるは18人(26.5%)であった。電車やバスに自由に乗れるは1人のみ男性にみられた。長谷川式痴呆スケールは44人に施行可能であり、平均得点は男女それぞれ18.3と11.5であった。人格特性検査が施行可能であった人は22人と小数であったため今年度は結果は集計しなかった。平成元年度に同様な調査をさらに行い結果を集積し先の目的について検討する。
|