研究概要 |
本年度は人およびブタ甲状腺から可溶化したTSH受容体をwheat germ lectin SepharoseやCon A Sepharose, HPLCを用いて精製し, バセドウ病患者血中の^<125>I-TSH結合抑制抗体(甲状腺刺激抗体)および萎縮性甲状腺炎患者の甲状腺刺激抑制抗体とこの部分精製TSH受容体との反応を^<125>I-TSH結合に対する抑制活性で検討した. その結果, この部分精製TSH受容体を用いた場合には, バセドウ病患者血中の抗体はより少量で強い^<125>I-TSH結合抑制活性を示すこと, creedeな可溶化TSH受容体を用いた^<125>I-TSH結合抑制活性との間に高い相関が見られること, さらに, 萎縮性甲状腺炎患者の甲状腺刺激抑制抗体の場合にも, 部分純化TSH受容体に対して強い^<125>I-TSH結合抑制活性を示すことが分った. 以上の結果から, その作用のちがいにもかかわらず, 甲状腺刺激抗体も甲状腺刺激抑制抗体もともに部分純化したTSH受容体に強く結合しうることから, ともに糖蛋白として精製されるTSH受容体自体に対する抗体であることが判明した. 次に, 可溶化TSH受容体をSDS-PAGEで分離し, Western blottingでニトロセルロース膜に転写後, 甲状腺刺激抗体と甲状腺刺激抑制抗体を用いて, これらの抗体の抗原の同定をおこなった. その結果, ヒト甲状腺では60Kと33Kブタ甲状腺では65Kと24Kの蛋白が両方の抗体でともに標識された. この結果は, 我々が以前得た^<125>I-TSHとTSH受容体のcrosslinkによってブタ甲状腺TSH受容体は65Kと38Kから成るとの実験結果ともよく一致するものであり, これらの抗体がTSH受容体を検出する上で有用であることが判明した. 昭和62年度経費としてはファルマシアLKBのMultiphoreIIを購入し, SDS-PAGEに使用するとともに, 等電点電気泳動, 二次元電気泳動に使用した.
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