研究概要 |
副甲状腺ホルモン(PTH)とビタミンD(D)の相互作用を検討するために副甲状腺機能低下症(PTH分泌【O!-】)と偽性副甲状腺機能低下症(PTH分泌【O!+】だが, PTH作用が発現しない)患者における腎でのCa再吸収をD治療前と後の状態で比較した. その結果, (1)D自体によるCa再吸収促進効果は, あるとしてもわずかである. (2)PTHによるCa再吸収促進効果が正常に発現するためにはD作用の正常化が不可欠である, ことが明らかとなった (J, Clin, Endocrinol, Mctab, 1988, 印刷中). 活性型Dである1,25(OH)_2DはPTHの合成を抑制すると報告されている. これに対し血清Ca値は, PTH分泌の調節因子ではあるが, PTH合成には大きな影響を与えないと考えられている. この点を明確にし, 1,25(OH)_2Dと血清Caレベルの相互作用を検討する目的で, ラットを用いたin vivoの実験を行ない, 以下のような予備的成績を得た. (1)1,25(OH)_2Dを経静脈的に投与すると, 血中1,25(OH)_2Dが著増する. しかし絶食下での血清Ca値上昇はごく軽度である. この場合PTHmRNA量の低下は著明でなく, PTH合成に対する抑制作用は明らかでない. (2)高Ca濃度の電解質溶液を静脈内に持続注入すると血清Ca値が上昇する. 1,25(OH)_2Dは低下傾向となる. この状態でPTHmRNA量は有意に低下する. (3)低リン食飼育は, 中等度の高Ca血症と1,25(OH)_2Dの上昇をもたらす. この状態でPTHmRNA量は著明に低下する. 以上の成績から, PTH合成に抑制的に作用するのは, 1,25(OH)_2Dの上昇自体であるよりも血清Ca値の上昇である可能性の方が大きいと思われた.
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