研究概要 |
本研究においては新しい内因性Na利尿物質である心房性Na利尿ペプチド(ANP)と内因性ジギタリス様物質(EDF)の細胞内作用機序を明らかにする目的で, これら物質の標的臓器と考えられるラット副腎皮質球状層細胞(G細胞)とラット大動脈平滑筋培養細胞(VSM細胞)を用いて検討した. ANPはG細胞においてアルドステロン(Ald)産生を抑制するとともに, CGMP産生を刺激した. また, VSM細胞においてもANPはcGMP産生を刺激した. ANPの血管拡張作用にはcGMPが細胞内セカンドメッセンジャーとしての役割をはたしていると考えられるが, G細胞においては, ANP以外の物質で内因性にcGMP産生を増加させたり, 外因性にcGMP誘導体を投与してもAld産生には一定の影響を与えないこと, あるいは, ANPのAld産生抑制作用はKイオンに依存性であるのに対し, cGMP産生刺激作用はKイオンの影響をうけないことなどが明らかにされ(Matsuoka et al Am J Physiol 1987), G細胞ではcGMPはANPのメッセンジャーではないことが示された. Ca代謝との関連についてANPはVSM細胞のCa濃度に影響を与えなかったが, フォスフォリパーゼC活性を亢進させた. EDFの作用機序について, EDFはG細胞でのAld産生を抑圧した. また, VSM細胞においてCa流入を促進し, Ca流出を抑制した(Goto et al Hypertension in press). 以上より, ANPはG細胞とVSM細胞でcGMP産生を刺激するが, G細胞におけるANP作用発現にはcGMP以外の因子が関与していることが示唆された. また, EDFはCa代謝に関与することにより作用を発現すると考えられるが, 今後大量の尿よりEDFを更に抽出, 精製して検討していく予定である.
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