本研究においてヒトII型糖尿病モデル動物であるNONマウスのインスリン遺伝子を単離し、その全塩基配列を決定することができた。初年度において、NONマウス肝から得た高分子DNAよりλファ-ジを用い1.1×10^6pfuの遺伝子ライブラリ-を完成した。ラットプレプロインスリンIcDNAをプロ-ブとしてプラ-クハイブリダイゼ-ション法によりスクリ-ニングし、3次まで行った結果この遺伝子ライブラリ-より5個の陽性プラ-クを得た。これらはEcoRI消化後プロ-ブとハイブリダイズする約1.4kbp、BamHI消化後約2.5kbpの断片を育するそれぞλNinsーI、λNinsーIIの二つの独立したクロ-ンなることを確認した。 研究2年目では、まずこのクロ-ンをBluescriptにサブクロ-ニングし、pNinsーI、IIを作成した。このプラスミドDNAを抽出し、マウスで唯一報告されい ているBALB/cマウスインスリン遺伝子の制限地図と比較すると、調べた範囲内ではpNinsーI、pNinsーIIはそれぞれインスリンI及びIIと一致した。次にpNinsーIとIIについてdeletion mutantを作成し、これらについて^<35>SーATPを用いdideoxy法(Sanger法)により各々の塩基配列を決定した。(1)pNinsーI、pNinsーIIはそれぞれマウスインスリンI、IIを含み、1384塩基、2512塩基より成っていた。(2)pNinsーIはBALB/cの配列と完全に一致した。(3)NONマウスインスリンI、IIとも5^'側にTATAbox、Insulin enhancer box、Enhancer core sequeneceを全て有し構造異常も認められなかった。(4)NONマウスインスリンIIはBALB/cが有しない100塩基余りの挿入を転写開始部位より994塩基上流に有し、また3^'側に3個の点変異を有していた。このNONマウスインスリンII5^'側上流の挿入部とNONマウスに認められるインスリンmRNA減少との関係は現段階では不明ではあるが、非常に興味ある知見であり、今後両者の関係の検討が必要である。
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