研究概要 |
培養ラット甲状腺細胞(FRTL5)を用い、TSH、バセドウ病患者血中に含まれるTSI(Thyroid Stimulating Immunoglohulins)、フォースコリン、dibuturyl cAMP刺激による^<125>I摂取上昇作用に及ぼす原発性甲状腺機能低下症患者IgGの影響を検討した。TSH刺激によるヨードの取り込みに対する抑制作用はTBII(TSH-binding inhibitor immunoglobulins)陽性のすなわちブロッキングタイプのTSH受容体抗体を有する原発性粘液水腫患者の全例(15/15)に、TBII陰性の原発性粘液水腫患者の62.5%(10/16)に、橋本病による甲状腺腫を有する機能低下患者の43.8%(7/16)に検出された。しかし甲状腺機能正常の橋本病患者においては15.4%(2/13)にしか検出されず、甲状腺機能低下症患者にのみ有意の抑制作用が認められた。この抑制作用はTSI刺激によるヨード摂取さらにTSH刺激によるcAMP産生に対する抑制作用と良好な相関関係を認めた(それぞれn=0.882,0929)。TBII活性とも有意の相関関係を認めた。TBII陰性の甲状腺機能低下症患者IgGの存在下においてはTSH刺激によるヨード摂取率とフォースコリン刺激によるそれとの間に有意の相関関係が認められた(n=0.685)。47例中6例(12.8%)にdibuturyl cAMP刺激によるヨード摂取反応に対して抑制作用が認められたが、その活性は弱いものであった。このように原発性甲状腺機能低下症患者IgGの、TSHまたはTSI刺激によるヨード摂取に及ぼす抑制作用には、TSH受容体におけるこれら刺激物質の結合を介するものと、結合以降おそらくアデニールシクラーゼの抑制機構を介するものと、少なくとも2種類存在することが明かとなった。
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