研究概要 |
1.ホルモンとしてのANP RIAによるANP測定に加え, Northern blottingによるANPmRNAの測定により, 心臓におけるANP生合成が心房のみならず心室でも起こること, 更に心不全や高血圧症では心室におけるANP生合成が著しく亢進していることを明らかにした. 更にANP/ANPmRNA比の検討より, 心房と心室におけるANP分泌機構の異なることが示唆された. また, 合成ANPを心不全患者に投与し心不全患者の左心機能が改善することを明らかにした. 更にその作用は, 主に血管拡張作用になることを明らかにした. また, ANP研究の有力な手段として, ANPの異なるエピトープに対するモノクローナル抗体の開発に成功した. KY-ANP-Iはα-hANPの環状構造に対するものであり, K.Y-ANP-IIはα-hANP, α-rANPを等しく認識し, また脳に存在するα-ANP〔4-28〕, α-ANP〔5-28〕を認識しないことより, ホルモンとしてのANPのみを認識するという特徴を有しており, 今後の研究に有用である. 2.神経ペプチドとしてのANP 我々は, ANPが神経ペプチドとして飲水行動, 食塩嗜好性, 降圧作用, ADH・ACTH分泌抑制作用を有していることを明らかにし, 脳内レニンアンジオテンシン系との拮抗作用を有する可能性指摘してきたが, この作用の一部は脳内ドーパミンニューロンに対する作用で説明できることを明らかにした. 即ちアンジオテンシンはドーパミンニューロンを刺激し, ANPは逆に抑制することを明らかにした. また, 脳内ANPは, 心臓よりのANP分泌に抑制的に関与している可能性を指摘した.
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