研究概要 |
レクチンによって刺激された脾細胞の膵島細胞障害性の検討。 NODマウスおよびBlo、GDマウスの脾細胞を10μg/mlのConA存在下で3日間培養すると芽球化し、マウス膵島細胞と1:100のE/T比で24時間反応させると有意の膵島細胞障害を示した。そこでこの系を用いてpoly(ADPーribose)合成阻害剤の効果を検討した。脾細胞と膵島細胞とを反応させる際に4mMのnicotinamide,4mMのpicolinamideまたは0.5mMの3ーaminobenzamideを加えておくと、膵島細胞の破壊が抑制された。一方、conAで脾細胞を刺激した際のconditioned mediumだけを膵島細胞に加えても、弱いながら膵島細胞を障害することが示された。そこで膵島細胞障害の一部にはサイトカインなどの液性因子が直接的に関与しているのであろうと考え、次の実験を行った。 γ-interferonとtumor necrosis factorの膵島細胞への作用の検討。 単層培養したマウス膵島細胞に、mouse γ-interferon 200V/mlとtumornecrosis factor 300V/mlを加えて培養した。サイトカインを加えて3日後から膵島細胞の破壊が起り始め、5日後には著明な破壊が認められた。このサイトカインによる膵島細胞破壊もPoly(ADP-ribose)合成酵素阻害剤であるnicotinamide20mMまたは3-aminobenzamide5mMにより有意に抑制された。 Tumor necrosis factorの抗腫瘍作用の機序として、細胞膜の障害の他に、核に作用してDNAの断片化をきたすことが示されている。このことはtumor necrosis factorがストレプトゾトシンと類似した機序で膵島細胞を障害しうることを示唆しており、poly(ADP-ribose)合成酵素阻害剤の効果も、この点から理解しうると考えられる。またNODマウスの膵島炎に対するnicotinamideのin vivoでの効果もサイトカイン作用に拮抗することによっている可能性がある。
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