I型糖尿病における膵島細胞障害をin vitroで再現し、細胞障害を防止する手段を開発することを目指して、以下のような研究を行った。NODマウスの脾則胞を膵島細胞と培養しただけでは、有意の細胞障害は認められなかったので、サイクロフォスファマイド注射により自己免疫機序を増強したNODマウスを用いるようにした。サイクロフォスファマイド注射後の脾細胞サブセットの変動を観察し、糖尿病発症との関連を見ると、NODマウスは骨髄抑制からの回復が遅く、Balb/cマウスと比較すると、サイクロフォスファマイド注射後にBリンパ球およびTリンパ球の比率が高く、芽球様のnullcellが少なかった。この傾向は後に糖尿病を発症したマウスで特に顕著であった。脾細胞をin vitroでC3Hマウスの脾細胞によりprimingした後のC3Hの細胞に対する細胞障害性は、サイクロフォスファマイド処理しないとNODとC3Hで差がなかったが、処理後はNODマウスの方が強いキラー活性を示した。次にレクチンによって刺激した脾細胞の膵島細胞障害性を検討した。ConAで刺激するとNODマウスの脾細胞は膵島細胞を障害したが、同様の障害は正常マウスの脾細胞でも認められた。このConA刺激脾細胞の膵島細胞障害は、poly(ADP-ribose)合成酵素阻害剤により抑制された。また、ConAで脾細胞を刺激した際のconditioned mediumだけでも、弱いながら膵島細胞を障害することが示された。そこで膵島細胞障害の一部にはサイトカインなどの液性因子が直接的に関与しているのであろうと考え、r-interferonとtumor necrosis factorの膵島細胞への作用を検討した。両者の存在下でマウス膵島細胞を培養すると、4日程度で細胞の破壊が起こる。このサイトカインによる膵島細胞破壊も、poly(ADP-ribose)合成酵素阻害剤により有意に抑制されることが明らかになった。NODマウスにおけるin vivoでの効果も、この機序による可能性がある。
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