血漿フィブロネクチン(pFN)の代謝、動態につき、蛋白代謝に関係の深い甲状腺ホルモンとの関係を研究した。まず、甲状腺疾患において、pFNは甲状腺機能亢進症においては63.3±15.2mg/dlと正常成人32.2±5.5mg/dlに比し高値、低下症では19.5±6.5mg/dlと低値であった。pFNと血清T_3、T_4との間にはそれぞれγ=0.724(p〈0.001)、γ=0.687(p〈0.001)の正の相関がみられた。 また、実験的にNew Zealand white male rabbitsを用い、tyroxine投与により甲状腺機能亢進家兎、methylthiouracil投与による甲状腺機能低下家兎のモデル動物を作り、^<125>Iフィブロネクチンを投与し、pFNのクリアランスを求めた。 正常家兎では、pFNは23.5±0.7mg/dl、pFNのhalf life(F_1 HL)72.8±2.6h、fractional catabolic rate(FCR)2.08±0.07%/h、The rate of synthesis(SR)は3.84±0.20mg/kg/day、pFNの血管内外の交換率(J_1/J_2)は0.295±0.05であった。これらに対し、甲状腺機能亢進家兎ではpFNは29.6±2.2、FN HL 59.8±1.0h、FCR3.07±0.52%h、SR7.13±1.17mg/kg/day、甲状腺機能低下家兎ではpFN20.7±1.7mg/dl、FN HL81.3±1.3h、FCR1.39±0.04%/hr、SR2.26±0.14mg/kg/day、J_1/J_2はいずれも0.30±0.06の成績をえた。 この成績から甲状腺機能亢進兎ではpFNの上昇がFNHLが短かく、FCRが高いがSRがより高値であることによる、逆に甲状腺機能低下家兎では、pFN HLが長くFCRが低いがSRがより低値であることによると解釈することが出来た。 さきの臨床例におけるpFN値が甲状腺機能亢進症で高値、機能低下症で低値である成績はこの実験成績でのFN代謝の結果から、主として甲状腺ホルモンによるpFNの合成の増加、減少によることが推定される。
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