研究概要 |
がんウイルスから発見されたがん遺伝子は正常組織にも存在し細胞の増殖分化に関与していることが明らかになってきた。ラットやブタ甲状腺細胞培養系でのこのがん遺伝子に関する研究は報告されているが、ヒト甲状腺細胞培養、ならびにラットin vivoの実験がないので行った。 バセドウ病患者、ならびに正常甲状腺細胞を培養しTSHあるいはInterleukinで刺激前後でc-mye mRNAの発現がみられるかどうか、^<32>P-v-mycCDNAをProbeとしてNorthern Blot analyeisを行った。その結果、正常甲状腺細胞ではCmyc mRNAの発現は検出できなかったが、バセドウ病甲状腺細胞では刺激前にすでにc-mycの発現がみられ、TSHまたはInterlenkin1の刺下では明らかに増加した。このバセドウ病のcmyc mRNAの発現はバセドウ病成因に関与していると考えられている甲状腺異常刺激物質によるものと推測された。 ヨ-ド不足の地域でendemie gocterがみられるが、その出現にがん遺伝子の関与がみられるかどうか、低ヨ-ド食で飼育したラットを用いて検索した。低ヨ-ドのラッドでは明らかに甲状腺腫大がみられ、Nortlern Blot analysisで、明らかなcmyc mRNAの発現がみられ、これは低ヨ-ド食が長いほど強かった。ヨ-ド不足による甲状腺腫大にがん遺伝子の関与が示唆された。 がん遺伝子の一つerbAがT_3の核受容体の遺伝子であることが判明した。このerbAのmRNAの発現が甲状腺ホルモンの影響をうけるかどうかみるために甲状腺機能亢進症、低下症患者血中リンパ球からmRNAを抽出してNorthern brot anelyes行った。その結果低下症においてerbAmRNAの発現が促進していることが明らかとなった。血中甲状腺ホルモンが低下するとT_3核受容体が増加し生体はこれに適応しているものと思われた。cytokinesのInterleukin1、6,Interferonrが甲状腺培養細胞の甲状腺ベルキオキシダ-ゼ(TPO)mRNA、サイログロブリン(Tg)mRNAを抑制することを発見した。
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