研究概要 |
悪性腫瘍の産生する高カルシウム血症惹起因子として、最近PTIIレセプター刺激性のparathyroid hormone-related protein (PTII-rp)が明らかにされた。しかしながら悪性腫瘍は、PTIIレセプター非刺激性の骨吸収促進因子も産生しており、(Sato K, et al.,Acta endocrinol.1987)、なかでもinterleukin 1 alpha(IL-1α)はIL-1βにほぼ匹敵する強力な骨吸収促進因子であることを我々は以前に報告している。(Sato K, et al.Biochem Biophys Res Commun.1986) 我々は高カルシウム血症で死亡した患者より扁平上皮癌をヌードマウスに移植し、高カルシウム血症惹起性の扁平上皮癌細胞株を樹立している。このような細胞(T3M-1,T3M-5)はPTIIレセプターを刺激しないタイプの骨吸収促進因子を産生しており、それがinterleukin 1 alpha(IL-1)であることを見いだした(Sato K, et al.Cancer Res.1987)。 また我々は高カルシウム血症で死亡した食道癌患者からPTII-rp産生性の扁平上皮癌細胞(EC-GI)を樹立している(Sato K, et al.Lpn L Cancer Res.1987)。この扁平上皮癌細胞PTII-rpのみならず、T3M-5細胞のように、マウス胸腺リンパ球の増殖刺激因子を産生しており、それがIL-1αであることをNorthern blot hybridization法より遺伝子工学的に証明した(Sato K, et al.J Clin Endocrinol Metab,1988)。 興味ぶかいことに、これらの腫瘍を移植されたヌードマウスは高カルシウム血症を呈しているにもかかわらず、尿中cyclic AMP排泄は亢進しておらず、正常範囲にある。したがって腎原性cyclic AMP排泄量が増加していないタイプの高カルシウム血症は、悪性腫瘍細胞が少なくとも2種類の骨吸収促進因子(PTIIレセプター刺激性および非刺激性の骨吸収促進因子)を産生するために生じているものと思われる。
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