ヒトにおける種々成長ホルモン (GH) 分泌刺激試験によるGH分泌機序に関しては不明であり、この点を明らかにする目的で以下の検討を行なった。健常人に200ugのGH放出因子 (GRF) を静注し、さらに120分後に同量のGRFを投与すると初回投与時に認められたような明確なGHの分泌増加は認められなかった。同様な方法でGRF前投与後にインスリン低血糖試験 (ITT) 、アルギニン (Arg) 点滴投与、L-DOPA経口投与を行なったところ、それぞれ単独負荷時と同様に明確なGHの分泌増加が認められた。さらにソマトスタチン (SRIF) の強力なアゴニストであるSMS201-995 (100ug) を前投与し、SRIFの過剰状態をつくり、GRF、Arg、L-DOPAの投与やITTを行なった結果、GRFによる有意なGH分泌増加は認められなかったが、ITTによるGH分泌増加は低反応ながら有意に存在した。したがってITTのGH分泌刺激作用はGRFの前投与では影響されずSRIFの過剰状態でも認められたことより、ITTにおけるGH分泌刺激機序ではGRFやSRIF以外の因子が主要な役割を担っていると考えられる。SRIFの過剰状態ではArgの作用は認められず、Argの投与直後にGRFを投与するとGRFのGH分泌作用が増強された事も確認しており、AHgはSRIFの分泌抑制を介してGH分泌を刺激すると考えられる。L-DOPA負荷時には末梢血中GRFは増加するが、GRFの前投与の影響を受けず、SRIFの過剰状態ではL-DOPAの作用が消失する事より、L-DOPAはGRF放出を刺激するのみならずSRIF放出を抑制してGH分泌を促進すると考えられる。以上よりヒトにおける種々GH分泌刺激試験にはそれぞれ異なった機序が存在すると考えられる。ラット視力床下部レベルにおいても相互作用を有し、GHの分泌調節に関与している考えられる。
|