研究概要 |
1(1),精製抗ヒト皮下結合織自己抗体(OIg)のプ-リング;皮下結合織に後腹膜結合織を代用した。CHAPSO可溶化100.000g膜分画をCNーBr活性化アグロ-スゲルに固相化し、これを用いてバセドウ病眼症患者IgGより抗後腹結合織膜抗体を精製した。精製IgG(OIg)の回収率は対血清IgG比0〜0.12%であった。当初の計画では、このOIgをプ-リングし抗原精製の為のアフィニティカラム作製に供する予定であったが、抗体陽性率及び抗体回収率が共に低くこれが不可能な為、前年度計画2〜5を以下の如く変更した。 1(2),後腹膜結合織膜成分に対する自己抗体の反応;Laemmliの方法に従い、SDS polyacrylamide gel electrophoresisを行い、展開された抗原をウェスタンブロッティング法にてニトロセルロ-ス紙に転写し、これに血清、粗Ig及びOIgを反応させた。ImmunodetectionはVector社の方法に従いABCーGOキットを用いた。15例のバセドウ病眼症患者のうち2例に54Kダルトン(Da)蛋白に対する自己抗体を認めた。正常人10例、橋本病1例、無痛性甲状腺炎1例及び甲状腺腫1例にはこの抗体を認めなかった。 1(3),54KDa蛋白に対する自己抗体の臓器交叉反応性;OIgは後腹膜結合織に対し54KDa蛋白にのみ単一のバンドを示す一方、後眼窩結合織、外眼筋に対しては29KDa蛋白にのみ単一のバンドを示した。後者の反応はOIgを後腹膜結合織により吸収することで良好に消失した。甲状腺、肝臓、脾臓および心臓にはOIgは反応しなかった。これはOIgが、臓器により分子量の異なる抗原決定基を認識する臓器交叉反応性自己抗体であることを意味する。この抗体はこれ迄発見されている抗線維芽細胞抗体、抗外眼筋抗体或いは抗甲状腺抗体とは異なるもので我々の報告が初めてのものである。
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