研究概要 |
本年度はTRH受容体に連関するGTP結合蛋白質(G蛋白質)の性状をラット下垂体由来GH3細胞を用いて検討した. Thyrotropin-releasing horinone(TRH)は細胞表面の受容体に結合後, G蛋白質に連関しホスホリパーゼC(PLC)を活性化してその作用を発現する. 種々のG蛋白質のうちアデニレートサイクラーゼ(AC)に共役するGsとCiはコレラ毒素と百日咳毒素がADP-リボシル化することにより活性調節される. 百日咳毒素はGH3細胞におけるTRHのPLC活性化に何ら影響を与えず, またTRHはACを活性化しないことからTRH受容体に連関するG蛋白質はGSやGiと異なるものと考えられる. しかしコレラ毒素の作用にはCAMPに依存しないものも最近見いだされたので, TRH受容体に連関するG蛋白質に及ぼすコレラ毒素の作用を検討した. あらかじめコレラ毒素とGH3細胞を培養すると細胞膜のTRH受容体にdownregulationがおきた. また細胞膜中のTRH感受性GTPase活性の促進が低下した. 他方, 膜を直接コレラ毒素でADP-リボシル化した場合TRHのGTPase活性促進作用はやはり低下したが, [3H]Me-TRHの結合は対照と同じ結合量を示し, downregulationをおこさなかった. 従ってコレラ毒素によるTRH依存性のGTPase活性の低下はTRH受容体のdown regulationによるものではなく, G蛋白質を直接ADP-リボシル化しておきるものと考えられる. TRH受容体に連関するG蛋白質はコレラ毒素感受性であることを示唆した. この成績はMol.Pharmacol,に印刷中である. 現在, ウシ下垂体の細胞膜分画よりG蛋白質を精製すると同時にGH3細胞の細胞膜からTRH受容体を抽出精製中である. 精製品を用いて再構成実験の実施の予定である.
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