研究概要 |
Ph陽性白血病におけるbcr再構成の結果からPh陽性CMLでは検索37症例の全例でbcr再構成が認められた. bcr内breakpointの解析ではCMLの慢性期と急性転化との症例間に差異はみられなかった. 一方, Ph陽性ALLと診断された症例ではbcr再構成を示す症例と示さない症例と示さない症例とが存在した. In situhybrizationではPh陽性ALLにおいてもc-abl遺伝子はCMLと同様に染色22gに転座している所見で認められた. abl mRNAの検索ではCML症例ではtyrosine kinase P710を産生する8.5kbのbcr/abl chimeric mRNAの転写がみられ, その転写は慢性期と比較して, 急性転化期には増幅していた. 一方, Ph陽性ALL症例では, novelなabl mRNAははっきりbcr再構成を示さず, 正常abl transcriptの7.0kbのsignalと重なっている可能性が示唆された. 私達が樹立したbcr再構成Ph陽性ALL白血病細胞株ではKurzrokらの報告と一致する7.4kbのnovel ablRNAの転写が示唆され, 更に検索をすすめている. CMLの急性転化及びPh陽性ALLにおいて, transfbrming遺伝子の解析をすすめ, NIH3T3細胞を用いたinvitro transfectionがCML急性転化症例で活性化N-rasが検出される症例がみられる. このことは, 急性転化に関与している可能性を示唆する. 急性転化に伴いN-rasの活性化が証明された症例から培養白血病細胞株の樹立に成功したので今後abl遺伝子と活性化N-ras遺伝子の急性転化への関与を解析したい. N-, H-, およびK-ras以外のCML慢性期の一部においてtransforming遺伝子を検出し, 現在その解析をすすめている. また, Ph陽性ALL症例おいてtransforming遺伝子の検索を行い, 一症例の白血病細胞よりtransforming遺伝子を検出し得た. 現在迄の解析ではN-, H-およびK-ras, rat, abl遺伝子ではないことがわかった(hst, ret等は検索中). 以上の結果より, Ph陽性白血病においては, abl遺伝子と他の癌遺伝子とがその発症に関与している可能性を示唆していると考えられる.
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