研究概要 |
陽性白血病における分子遺伝学的解析を施行した。サザン法によるbcr再構成の検討では、CML症例は5.8-Kb bcr ex50n2,3,4の間のいずれかのintronに切断点が集中している結果を示したが、ph'陽性ALL症例における切断点は多様であり、bcr再構成群とbcr非再構成群に分かれた。ノザン法によるablmRNAの検討では、CML症例は8.5-kbbcr-abl hybrld mRNAの発現を示したが、検索したph^<1+>bcr^-ALL症例2例では約7.5-kbあるいは7.3-kb部位に異常な がみられた。CMLと異なりbcr exson1と2の一部を含むbcr CDNA probeを用いたノザン法では異常はsignalは認めず、ph'陽性ALL特異的P190ablキナーゼを産生する。bcr遺伝子exson1とabl遺伝子の融合の報告と一致した。ph'陽性ALL細胞はproB細胞としてのphenoおよびgeno-typeを示したが、myeloblastの増殖を伴うbilimeal hybrilo lenkemia症例あるいはmyeloidへの分化能を有する症例の存在はph^<1+>bcr^-ALL細胞で産生されるP190ablキナーゼがmyeloid細胞の増殖にも関与するとともに、CMLにみられるP210bcr-ablキナーゼと異なり急性型増殖に関与することが示唆された。CML細胞とph^1bcr^+ALL細胞におけるチロシンキナーゼは他種白血病細胞と異なりcytozol画分での活性が著しく増加していた。このことはP210ablキナーゼが膜親和性を欠く構造を有することとの関連性が示唆された。 更に私達はCMLにおける慢性期から急性転化へのtransformationの分子遺伝学的機序について検索をくわえた。bcr再構成より検討したbcr切断点は慢性期と急転期に明らかな差異は認ず、bcr切断点と急転との相関性は否定的であると考えられた。CML急転にともない8.5-kb bcr-abl hybridmRNAの増幅がみられるとともに、invitro DNA transfection assayにより急転症例7例中2例において活性化N-ras遺伝子が検出された。以上の結果はCMLの急転にはabl遺伝子の増幅とともに、abl遺伝子以外のtransforming遺伝子が関与する症例が存在することを示唆するものと考えられる。
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