造血細胞には種々の増殖刺激因子が作用し、分化・増殖を促すことが知られている。近年、ヒト顆粒球・マクロファージ刺激因子(G-CSF)、ヒト顆粒状・マクロファージ刺激因子(GMーCSF)のcDNAがクローニングされ、その1次構造が明にされている。我々は、G-CSF、GM-CSFの正常造血細胞に対する効果、および、造血器悪性腫瘍における関与を検討するため、以下の実験を行った。1.ヒトG-CSF、GM-CSFのcDNAをプローブにして、種々のヒト白血病・固形腫瘍の臨床検体より抽出したRNAについて、1-ザンブロッティングを行い、その発現量を比較した。その結果、神経膠芽腫一例、肺癌二例、成人T細胞性白血病一例にGM-CSF遺伝子の発現を認めた。これは、ヒト固形腫瘍で本遺伝子の発現が確認された最初の報告である。これらのうち、神経膠芽腫と肺癌については、その細胞株が樹立され、培養上清にGM-CSF活性があることが確認された。この事より、強く発現されているGM-CSF遺伝子転写物は実際に、蛋白質に翻訳されていことが推定された。これらの腫瘍DNAには、サザンブロッティングで確認できる遺伝子の大きな再配列は認められなかった。次に、ヒトG-CSFcDNAをプローブにして同様な解析を行った所、ヒト肺癌三例、肺癌一例に発現を認めた。肺癌のうちの一例は、mRNAの大きさが正常に見られるものと異なっていた。 2.次に、G-CSFが造血細胞に作用する機序を検討するため、3週令のBalb/cマウスにヒトrecombinant G-CSFを6×10^<5u>/d;14日間皮下注した。投与群では、肝・脾が非投与群の対照に比べて明らかに腫大した。これらの腫大肝・脾より、RNAを抽出し、種々のチロシン・キナーゼ型がん遺伝子のプローブににて、低ストリンジェンシーでノーザンブロッティングを行った所、腫大肝で明らかに、その発現量が亢進しているfps関連遺伝子を同定することができた。
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