研究概要 |
1.白血病幹細胞の増殖動態・増殖因子に関する研究 急性骨髄性白血病患者(AMZ)から白血病幹細胞を分離し, 液体培養法とメチルセルローズ培養法で増殖動態を研究し, 患者予後との相関を検討した. この結果, 白血病幹細胞の生物学的特徴である自己再生能の強弱が予後と有意に相関することが明からになった. 次に, 顆粒球コロニー刺激因子(CSF)の白血病幹細胞の増殖に対する効果を研究した. この目的には遺伝子組み換えIL-3, GM-CSF, G-CSF, M-CSFの4種類を検討した. この結果, IL-3, GM-CSF, G-CSFは正常の顆粒球糸前駆細胞のみならず, 白血病幹細胞の増殖をも刺激することが明らかにされた. 患者間で程度の差異があるが, IL-3, GM-CSF, G-CSFは白血病幹細胞の自己再生能を刺激しうることも明らかにされた. さらに, 白血病幹細胞を選択的に刺激する増殖因子の存在の有意を研究した. ヒト膀胱癌細胞株5637の培養上清(5637-CM)は, 白血病幹細胞の増殖を強く刺激する. そこで5637-CMを解析したところ, 5637-CMにはGM-CSF, G-CSF, IL-1などが含まれていることが明らかになった. これらはいずれも正常の造血系にも作用する増殖因子であり, 特異的な白血病幹細胞増殖因子に関する研究は現在進行中である. 2.白血病幹細胞の増殖の抑制に関する研究 白血病幹細胞の増殖を抑制し, AML患者を治癒に導くことを目的として, 各種抗癌剤の白血病幹細胞に対する増殖抑制効果を検討した. この結果, cytosine arabinosideは白血病幹細胞の増殖能のみならず, 自己再生能にも作用するが, anthracycline系抗生剤・4-hydroperoxycyclophosphamide・Vinka alkaloidsは自己再生能に対する効果は劣ることが明らかになった. 現在これ以外の抗癌剤・BRMについても検討中である.
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