研究概要 |
T細胞リンパ腫及び前リンパ腫状態と考えられる血管免疫芽球性リンパ節症(AILD/IBL)様病変またHodgkin病様病変をもつ症例を蒐集し、各種の単クローン抗体を用いて免疫学的にリンパ腫細胞の分化段階、帰属の検討を行うと共に、臨床材料から高分子DNAを抽出し、^<32>P標識cDNA probe[T細胞受容体遺伝子(TcR gene)にはCβ_1,Jγ、免疫グロブリン遺伝子(Ig gene)についてはJ_H,J_K,Cμなど]を用い、Southern blot法により免疫遺伝子(immune gene)の再構成の有無を検討し、免疫表現型(immunophenotype)と免疫遺伝子型(immunogenotype)を対比検討した。成熟T細胞腫瘍(CDー4 NHL11例、ATLL9例、CDー8 NHL5例では表現型、遺伝子型ともよく相関し、TcR gene再構成はT細胞リンパ腫のクローン性の指標として有用であり、細胞系統性(cell lineage)の決定に役立つことが判明した。一方未熟リンパ系腫瘍のTーALL/LBL(30例)ではTcR gene及びIgH geneの両者が再構成している二重遺伝子型(dual genotype)を示す症例が10%存在し、細胞分化初期の不確定性ないし腫瘍化隨伴現象の可能性が示唆された。また未熟T細胞腫瘍の検討から、胸腺分化段階stageIに相当する症例で既にTcRβ鎖遺伝子の再構成をみる症例があり、stageII以後では全例で同再構成が認められた。また検索症例のなかで、Tリンパ芽球性リンパ腫(TーLBL)から異系統の骨髄球系白血病に移行した症例が、両形質をもつ白血病にも拘らず、腫瘍細胞の単一細胞起源であることが分子生物学的に証明された。さらにAILD/IBLはリンパ節内T細胞を中心とした異常免疫状態(diffuse lymphoid dysplazia)と考えられるが、23例のAILDのうち細胞異型が強く、clear cellを伴う11例ではTcR geneの再構成を73%に認め、9%に二重遺伝子型を認めた。またHodgkin病15例のうち27%にTcR geneの再構成、また7%にIgH geneの再構成を認め、これらAILD/IBL病変及びHodgkin病とT細胞リンパ腫との類縁性が免疫遺伝子型から推測された。
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