研究概要 |
人由来培養白血病細胞が各種分化誘導剤により分化する過程でセカンドメッセンジャーがどのような役割を演じているかを検討した。又分化の過程をコミットメントと分化関連形質発現のステップに分けその機序を解析した。活性型ビタミンD_3(D_3)やRAによるHL60細胞の分化はCa欠乏培地や細胞内Caイオン動員を阻害する高濃度VerapamilやTMB8、又PKA活性を増加さすdbcAMP,PKC活性の阻害剤であるstaunosponine(S)により増強された。一方PKA活性の阻害剤であるH_8は分化誘導剤の効果を阻害した。K562細胞の赤血球系への分化の検討ではPKC活性を上昇さすOAGによりheminによるhemoglobinの誘導が増強されdbcAMPやS添加により阻害された。しかしOAGはAra-Cらの他の分化誘導剤によるK562細胞の分化に影響を及ぼさなかった。Mg欠乏培地中でD_3存在下にHL60細胞を培養すると細胞は分化にコミットするが分化関連形質の発現は抑制され、細胞質中にはtransに働く分化誘導活性が見い出される。HL60の分化で発現してくるリゾチーム(Ly)mRNAはD_3存在下にMg欠乏培地中でHL60細胞を培養すると発現しないがその後Mg存在培地に移すとD_3非存在下でも発現してくる。その過程でサイクロヘキサマイドを添加するとLy mRNAの発現が抑制された。上記の結果は1、HL60細胞、K562細胞がそれぞれ異なる細胞系列へ分化する際、異なるセカンドメッセンジャーがその刺激伝達系として用いられている。2、K562細胞のheminによるhemoglobinの誘導は他の分化誘導剤と異なる刺激伝達系を利用している。3.HL60細胞のD_3による分化へのコミットメントは新らしい蛋白合成を必要とする、らの可能性を示唆している。現在さらに分化時の蛋白リン酸化の様相を検討している。
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