研究課題/領域番号 |
62570546
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河 敬世 大阪大学, 医学部小児科, 助手 (70107035)
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研究分担者 |
原 純一 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
石原 重彦 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70232329)
泉 裕 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
勇村 啓子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
多和 昭雄 大阪大学, 医学部小児科, 助手 (00155277)
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キーワード | 急性白血病 / lineage診断 / 免疫グロブリン遺伝子 / T細胞受容体遺伝子 / 再構成 / 分類 / phenotype / genotype |
研究概要 |
白血病細胞の起源に基づいた分類法を確立し、治療に応用する目的で小児急性白血病細胞のphenotype、genotypeの解析を行った。急性白血病105例はFAB分類、phenotypeからB-lineage 57、T-lineage 16、ANLL 15、AUL 17にまず分類された。B-lineageは免疫グロブリン(Ig)遺伝子H鎖の再構成(R)を、T-lineageはT細胞受容体(TCR)遺伝子のRを有しかつそれぞれのlineageに関連した表面マーカーを有するものと規定すると、B-lineage57例中2例がIgH鎖がgermline(G)で、T-lineage16例中2例がTGR遺伝子がGであり、それぞれ除外すべき症例と考えられた。またB-lineage ALLの半数近くの症例でTCRγやβ鎖のR(いわゆるdual R)がみられたが、TCRβ鎖のmRNAを調べる限りT-lineage ALLにみられるような活性型のメッセージは産生しておらず、mRNAレベルでT-lineageとの鑑別可能であった。TCR遺伝子(σ、α、γ、β)のRはIg遺伝子のようなdavelopmental hiararchy(DJ→VDJ→K→入)が明らかにされていなかったが、今回の検討からTCRσ鎖がもっとも初期にRすることが判明した。AULと分類された11例でgenotypeを詳細に調べると、IgH鎖とTCRσ鎖のRを示す6例と全ての再構成遺伝子がGの5例に2分されることが明らかとなった。R群の一部ではTdTやCD3ーγのmRNAが検出されることから、T-lineageにcommitmentした段階での白血化が示唆されたが、G群の5例ではMROのmRNAも含めてこれらlineageに関連したメッセージは検出されず、極めてstem cellに近い段階での白血化と考えられた。AULや乳児白血病の予後は悪いといわれているが、R群、G群と予後との相関性が注目される。このように大多数の症例でlineage診断は可能であるが、phenotypeとgenotypeのdissociationのみられる症例も少なからず存在する。今後は血球分化の多様性と法則性の観点から、白血病細胞を詳細に検討することがleukenogenecisの解明、ならびに新しい治療法の開発に結実していくものと思われる。
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