研究概要 |
1 原爆被爆者白血病標本の収集作業の進渉状況 長崎大学医学部原研内科, 広島大学原医研内科, 長崎日赤原爆病院, 長崎市民病院, 広島日赤病院, 広島県立病院, 放射線影響研究所の各施設に保存されている広島, 長崎両市において9km以内の被曝例より発生した白血病例の末梢血, および骨髄塗抹標本を総点検し, 染色状況良好で, 再分類可能な標本を抽出した. その結果, 昭和62年度においては464例を収集することができた. これは, これまで長崎市と広島市において登録された被爆者白血病の60%に当る. 2 標本の年代別区分 広島例については, 1946年からの5年間区分の各年代とも収集率は, 登録例の50%以上であったが, 長崎例については, 1946〜50年, 1951〜55年の初期の2区分では30%前後と低く, 昭和63年度もさらに標本収集作業を続ける必要がある. 3 検鏡作業 464例の標本について, 白血病の診断の確度, 白血病病型のFAB基準に基づく細分類を開始した. 昭和62年末において約70%について鏡検を完了した. 4 再分類に基づく被爆者白血病の再評価 長崎例においては, 登録例の約20%が, ヒトT細胞性白血病(RNA)ウイルスにより生じるとされている成人T細胞白血病(ATL)が混在していることが明らかとなってきた. 広島例にはATLは全くみとめない. しかし広島では, 明らかにより多数例の慢性骨髄性白血病が発生している. 今後標本収集をつづけ, かつ鏡検を完了し, さらに保存されている臨床記録に当って再分類を確実なものにする.
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