3年度にわたる研究を終了し以下の如き成果を得た。 1.1980末までに登録されている9km以内の被爆者集団に発生した白血病766例中、493例(64.4%)について白血病の再診断と、FAB分類にもとづく細分類を完了した。また各症例の血液・骨髄染色標本のカラ-フィル撮影も終了した。 2.21カテゴリ-の白血病病型細分類を実施し、さらにこれらを以下の5型の大カテゴリ-に編成し、被爆線量、年令、発症までの期間等について統計解析を行なった。 3.5大カテゴリ-の症例数及び百分率は、急性リンパ性白血病(ALL)63例(13.5%)、急性骨髄性白血病(AML)181例(39.0%)、Myelodysplastic Syndrome(MDS)26例(5.6%)、慢性骨髄性白血病(CML)106例(22.8%)であった。成人T細胞性白血病(ATL)が長崎においてのみみられ35例(全体の7.5%)であった。 4.被爆年令については、16才以上で被爆した群ではCMLの比率が特に高く、一方16才未満群では、特にALLが高かった。 5.CMLの全白血病に占める率は、広島において明らかに高かった。100ラド以上被爆群にてCMLは34.7%を占めた。 6.放射線影響研究所の固定サンプル(LSS)を用いた全白血病の発生頻度を基礎値として、今回の病型分類から得られた大カテゴリ-5型の百分率から、各病型の推定発生率を計算した結果、ALLとCMLは被爆後早期に発生率は上昇し以後急速に低下した。AMLも比較的早期に発生率が上昇したものの、上昇は長く持続した。 7.原爆放射線の白血病誘発効果は被爆時年令、被爆線量により発生する病型が左右された可能性が高い。 8.CMLは比較的低い線量(50〜100ラド)でも誘発されたと考えられる。
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