研究概要 |
トロンジンによるフィブリノゲンのフィブリンへの転換及びフィブリン塊の形成は, トロンビンによりフィブリノゲンのAα鎖, Bβ鎖からフィブノペプチドA,Bが放出されて露呈されたα鎖, β鎖の内, 主としてα鎖のアミノ末端とγ鎖のカルボキシ末端に近い部分との重合により来たされるとされている. しかしながらγ鎖側の結合部位あるいは機能構造については未だ明らかにされていない. 本研究は先天性異常フィブリノゲンの内, フィブリン重合が不良でγ鎖に異常が存在するものの本能を見極めることにより, この問題を解決するために行なっている. フィブリノゲン京都工はSDSポリアクリルアミド電気泳動で見かける上の分子量が小さな異常γ鎖を含む. γ鎖を精製し, ブロムシアンあるいはリシルエンドペプチダーゼで分解した後, 高速液体クロマトグラフィでペプチドを分画した所, 異常ペプチドの存在が見出された. 異常ペプチドを全自動アミノ酸構造解析機で解析した所, γ鎖308番のアスパラギンがリジンに置換していることが判明した. この異常は世界に1例しか存在しない. フィブリノゲン栃木はSDSポリアクリルアミド電気泳動で見つけ上の分子量が大きな異常γ鎖を含む. 精製γ鎖を同様に解析した所, 異常ペプチドが見出され, そのアミノ酸構造の解析でγ鎖275番のアルギニンがシステインに置換していることが判明した. フィブリノゲン栃木をトロンビンで処理すると凝固しない成分が存在し, その非凝固性フィブリノゲンには異常γ鎖が多く存在しており, かつ正常フィブリンの重合を阻害することが判明した. 以上の成績からγ鎖275番及び308番を含むγ鎖の構造がフィブリン重合に重要な役割を演じていることが明らかとなった. フィブリノゲン京都工についてはプラマミン分解産物の解析を, また新たに見出したフィブリノゲン大阪IIIの解析も今後行なう予定である.
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