研究概要 |
G-6-PD isozymeの研究により、多くの骨髄増殖性疾患は、多能性幹細胞に異常のあることが証明されている。また、急性リンパ性白血病(ALL)ではリンパ球系のみに異常があること、急性骨髄性白血病(AML)では多能性幹細胞に異常がある場合と、顆粒球系のみに異常がある場合があり、病因に多様性がありそうなことも報告されている。しかし、この方法は患者がG-6-PD isozymeのheterozygoteであることが不可欠であり、我が国では検索不可能である。そこで、私たちは造血コロニーの形態と染色体分析を同時に行う事により、同様に血球系の腫瘍化の及んでいる範囲を検討する方法を開発した。この方法を用いれば、より多くの患者、より多くの疾患で腫瘍化の起源細胞を検索することができるばかりでなく、病期の進行状況により、種々のクローン(正常クローン、または異常クローン)がどのように増滅するかを、追跡検索すくことが可能である。私たちは既に、特発性骨髄線維症、赤白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄性単球白血病、若年性慢性骨髄性白血病が、いずれも多能性幹細胞の異常に基く疾患であることを証明してきたが、今年度は新たに下記の事を証明した。 1.2種の異常クローン(A,Bクローンとする)が存在していた若年性慢性骨髄性白血病の症例に於て、2年8ケ月間、この2種のクローンの増殖過程をin vivo(骨髄血と末梢血)とin vitro(骨髄血と末梢血より得られた単一コロニー)との条件下で追跡し比較検討した。その結果、(1)Aクローンより派生してきたBクローンが、次第に優勢になり、反対に、Bクローンは減少して行った、(2)骨髄血と末梢血との比較では、in vivo, in vitroのいずれの条件下においても、末梢血の方がBクローンの%は高値であったことから、新たに発生するクローンは、骨髄以外の場で発生し、末梢血中に先に流れて来る可能性が示唆された。
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