研究概要 |
急性白血病の治療において化学療法後の正常顆粒球の回復を促進することはきわめて重要である. 最近ヒト遺伝子組み換え型顆粒球単球コロニー形成刺激因子(rGM-CSF)や遺伝子組み換え型顆粒球コロニー形成刺激因子(rG-CSF)が開発されこの目的に利用されることが期待されている. 臨床応用に先だちこれらの物質が白血病細胞の増殖と分化に及ぼす影響を明らかにしておく事が必要である. 本研究では白血病コロニー法を用いこの点について検討した. 急性骨髄性白血病患者20人の末梢血または骨髄より白血病細胞を分離し, ウシ胎児血清とrGM-CSFまたはrG-CSFまたはPHA刺激白血球培養士清(PHA-LCM)を加えメチルセルローズ中で培養した. 一定期間後にコロニー数の算定を行いコロニー形成刺激因子のコロニー形成刺激作用をPHA-LCMのそれと比較検討した. またコロニー構成細胞の形態, 表面形質ならびに自己再生能についても検討した. rGM-CSFは19症例中12例で白血病コロニーを形成したが, その程度は一般的にPHA-LCMに比べ低かった. 病型M1ではコロニー形成はほヾ認められなかったがM4ではPHA-LCMとほヾ同程度のコロニー形成を認めた. M2およびM5ではその中間でありrGM-CSFの作用は病型により明らかに異っていた. rG-CSFは20症例中5例のみでコロニー形成を認めた. 反応した症例数はrGM-CSFに比して明らかに少く, 反応した例でもその程度はごく軽度でありrG-CSFは白血病細胞の増殖には重要な役割を果していないと考えられる. コロニー構成細胞の形態, 表面形質および自己再生能はPHA-LCMのそれとほゞ同様であり分化の傾向は認められなかった. これらのコロニー形成刺激因子を臨床的に用いる場合, rGM-CSFは病型を選んで使用することが必要で, M1では安全に用いることが可能と考えられる. またrG-CSFは白血病細胞をほとんど増殖させないので臨床使用が十分に可能であると考えられる.
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