本研究の目的は、胃癌・大腸癌が増殖する過程で、癌細胞の増殖促進物質や抑制物質を投与した場合、担癌生体のタ-ゲットとなる組織のポリアミン値がどのように変動するかを検討することである。 1)実験大腸癌に対する高脂肪食投与と組織内ポリアミン 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸含有食で飼育したラットにDMHを投与し、大腸腫瘍の発生頻度と大腸粘膜のポリアミン値を比較検討した。腫瘍発生頻度は、標準食で50%に対し、飽和脂肪酸群75%、不飽和脂肪酸群80%であった。不飽和脂肪酸投与の大腸粘膜のポリアミン値はPUT、SPD、SPMとも飽和脂肪酸投与群より高値を示し、ポリアミン合成を促進させていた。 2)実験大腸癌に対するビタミンEの影響 高脂肪食で飼育したラットにDMHを投与し同時にビタミンEの濃度を3段階に分け投与した結果、大腸腫瘍の発生頻度は低ビタミンE群50%標準ビタミンE群60%、高ビタミンE群42.9%である。ビタミンEの発癌抑制効果が認められた。 3)ポリアミン合成阻害剤(DFMO)の大腸発癌抑制効果: 1%DFMO溶液を経口的にラットに投与した。DFMO群の大腸腫瘍の発生頻度は40%、対照群は80%であり、DFMOは大腸発癌を抑制し、ポリアミン合成も抑制した。 4)胆汁逆流と残胃癌の発生 犬に残胃を作製、B-I法、B-II法、R-Y法で再建し2ヶ月毎に内視鏡的に残胃粘膜を生検した。B-II法の粘膜の異型度が強く、残胃粘膜のポリアミン値も高値を示した。 以上、癌の増殖促進因子と抑制因子の効果はポリアミン値の動態と相関することが示唆された。
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