1.成人T細胞白血病ウィルス(HTLVー1)陽性白血病株ATLー2の培養上清中にin vitroのラット肝細胞のEGF依存性増殖を抑制する因子(hepatocyte growth inhibitory factor HGI)活性が存在した。このHGIは、sephacryl S200のゲル濾過にて分子量2万5千前後のところに回収され、また同上清中に存在することがすでに報告されているInterleukinー2(IIー2)レセプター/p55(Tac)を誘導する因子(ADF)とDEAE culumnにて分離できた。さらに精製を進めようとして、reverse phased chromatographyを試みたが、活性が失われたため、他の精製法を試みているところである。 2.(1)HGIの肝細胞増殖抑制の作用機序はcytostaticで、EGF受容体を変化させないことが明らかになった。(2)HGIはヒト肝癌細胞株PLC/PRF/5の自然増殖、及びEGF依存性増殖のいずれに対しても抑制しなかった。(3)ADFがILー2R/Tac誘導活性に加えて、リンパ系細胞における増殖誘導活性や、各種サイトカインとの共同効果が認められるのに対し、HGIは増殖抑制活性を示すが、HGIの活性はADFの活性と相関した。 3.(1)他のサイトカインのうちtransforming growth factorーβ(TGFーβ)には強い肝細胞増殖抑制作用がみられたが、northern法により、このTGFーβのmRNAの発現していることをATLー2細胞において見いだした。(2)ATLー2の培養上清はそのままではTGFーβ活性を示さなかったが酸処理をするとTGFーβ活性が発現した。(3)しかし、TGFーβのmRNAの発現の見られる細胞株の中に培養上清中にHGI活性の見られないものがあることがわかり、半精製したHGIを用いてHGIとTGFーβの異同につき更に検討中である。
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