研究分担者 |
市川 長 大阪大学, 医学部付属病院, 医員
蓮池 康徳 大阪大学, 医学部付属病院, 医員
久保田 直行 大阪大学, 医学部付属病院, 医員
後藤 満一 大阪大学, 医学部, 助手 (50162160)
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研究概要 |
ラットの同所性肝移植においては, ある種の系の間では免疫抑制剤を用いることなく移植肝が生着ることが知られている. 我々が用いているACIよりwistarという系においてもレシピエントは免疫抑制剤なしに長期成着する. この組合せに対する当該年度以前の検討の結果より以下の諸点が明らかとなった. レシピエントにドナーと同系のラットの皮膚を移植すると移植後早期(4週まで)においては生着は園長するが, 長期を経たもの(8週以上)では皮膚は正常に拒絶される. レシピエントの脾細胞および血清を正常wistarラットにtransferし同時にACIの心移植を行ってその生着園長効果をみた. その結果, 脾細胞には生着延長効果は認められなかったが, 肝移植後10日から20日目までの血清には生着延長効果を認めた. そこで当該年度は, 血清中の因子を同定すべくinvitroにおいて検討を加えた. またレンピエント側に免疫応答を抑制する因子が存在しないにもかかわらず移植肝が長期生着しているのは, 移植肝の免疫原生が低下しているのではないかと考え, 移植片内のドナー由来Ia抗原の変化を検討した. MLR中に心移植の実験で生着延長効果のあった血清を添加しその免疫抑制メカニズムを検討したが, 血清はMLR反応をある程度抑制するもののその力価は弱かった. そこで今後CML中にこの血清を添加し, CML反応を抑制するか否かを検討するつもりである. 移植肝内のドナー及びレシピエント由来Ia抗原を免疫組織化学的手法を用いて検討したところ主なドナーIa抗原の提供原であるDendritic cellとKupffer cellがレシピエント由来の細胞と置換されていることが明らかとなり移植肝の免疫源生が低下していることが示唆された. さらに長期生着した移植肝を正常wistarラットの腎・被膜下に再移植し組織学的に検討したところ3例中3例とも拒絶反応を惹起しなかった. この系では, 移植肝が長期生着するのは, グラフトの免疫原性低下が一因であることが明らかとなった.
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