研究概要 |
実験:Wister系のラットを用いて亜鉛含有量10ppmの低亜鉛食を投与したが, 交配前よりの投与では妊娠率が低く, 妊娠しても妊娠20日目に胎児を得ることはできなかった. 従って, 低亜鉛食では妊娠の維持が困難であると推測された. 交配後に投与を開始した群の胎児は, 骨格の異常を呈したが, 消化管奇形は認められなかった. 臨床例における検討:出生前診断により明らかであった先天性奇形を有する11例(卵巣嚢腫3例, 消化管奇形3例, 臍帯ヘルニア, 腹壁破裂3例, Cystic hygloma2例)について, 治療目的で羊水穿刺を行った際および分娩時に得られた羊水中の亜鉛濃度を測定した. 卵巣嚢腫例, Cystic hygloma例では, 羊水中の亜鉛濃度は在胎週数とともに増加しているが, 消化管奇形例や臍帯ヘルニアや腹壁破裂例では, 羊水中の亜鉛濃度は在胎週数をとわず低い値を示したものや, 在胎週数とともに増加するが, 他の症例に比べて低い値を示した. 同時に採血した母体血清亜鉛濃度はいずれも低値であった. 今後の方針:低亜鉛飼料中の亜鉛含有量を10ppm以下とし, 妊娠前半期のみ低亜鉛食で飼育する群, 妊娠後半期のみ低亜鉛食投与群および妊娠の全期間を通じて投与する群とにわけて検討する. 臨床例についても羊水中の亜鉛濃度の変化と胎児奇形との関連性を検討する.
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