研究概要 |
〔目的〕 異種皮膚移植の拒絶および脱落の形態学的, 組織学的変化を観察し, 異種皮膚移植においても同種皮膚移植の場合と同様に拒絶脱落後に残存する組織成分の一部が自家皮膚よりの表皮形成に有利に働くか否か, また移植された異種皮膚組織の存在自体が創に対してどのような影響を及ぼすかなどを知る目的で実験を行った. 〔方法〕 異種皮膚脱落後の自家表皮の進展状態を観察するために, 実験動物としては一般のmouseに比べて創収縮の起こりにくいtight skin mouseを用いた. 背部にヒト分層皮膚と自家皮膚との混合植皮群と自家植皮群とを作成し, 創の収縮状態および異種移植片の脱落後の形態学的, 組織学的変化を経時的に観察した. 〔結果と考察〕 異種植皮片は10日前後で脱落するが脱落後も肉眼的に白色の真皮成分が存在するのが観察された. また組織学的にも膠原腺維を主体とする新皮成分の一部は残存し, 同種植皮の場合にみられるのと同様に自家皮膚よりの表皮がその上に這い出している所見が得られた. しかし異種植皮脱落後の場合は同種植皮の場合に比較して自家表皮の進展が遅く, 残存する真皮成分も大部分は異種植皮片脱落後, 比較的早期に肉芽内に吸収されてゆくような所見を得た. また異種混合植皮後の創全体の拘縮状態を対称群と比較してみると創閉鎖時点に於いて両者の間に有意差を見出せなかった. これらのことから, 同種植皮の際に表皮形成促進の足場となると考えられる残存する真皮成分は, 異種植皮の場合にも表皮形成促進の重要な役割を果たしていると考えられるが, 同種植皮の場合程安定したものではないと推測される. この点については現在観察中の異種混合植皮, 同種混合植皮群の実験結果ともあわせて総合的に判断したい.
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