1.DMBA乳癌における、エストロゲン投与によるプラスミノーゲンアクチベーターの誘導を、in vivo、in vitroの両系で確立することができた。さらにこれらの現象が、アクチノマイシンD、シクロヘキシミド、タモキシフェン等の各種阻害剤で抑制されることから、DMBA乳癌におけるプラスミノーゲンアクチベーターの産生は、一連のエストロゲンサイクルを経たものであることが明らかとなった。また、in vitroでみられるエストロゲン依存性プラスミノーゲンアクチベーターの誘導は、細胞増殖を伴わないものであることも判明した。このことは、従来から議論の多い、DMBA乳癌の発育におけるエストロゲンの役割に、プロラクチンを介する経路以外の直接作用が依存することを明らかにしたものと考えられる。 2.ヒト乳癌におけるプラスミノーゲンアクチベーターには、ウロキナーゼ型と、組織型の2種類が存在することが判明した。また、2種類のうち、後者が、エストロゲン依存性のサブタイプであることも明らかとなった。 3.ヒト乳癌のホルモンレセプターとプラスミノーゲンアクチベーターとの間には、明らかな陽性関係が存在することが明らかとなった。この事実からプラスミノーゲンアクチベーターが、ヒト乳癌のホルモン依存性を予知する新しいマーカーとなり得ることを示唆するものである。 以上が、現段階における研究成果の概要である。現在、エストロゲン依存性プラスミノーゲンアクチベーターに対するモノクローナル抗体の作製を手がけているが確立していない。今後の課題である。
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