研究概要 |
癌性腹膜炎に対する活性炭吸着マイトマイシン(MMC-CH)の作用機序を, 主に腹膣マクロファージ(PM)にspotをあてて免疫学的に検討し以下の結果を得た. 1.MMC-CHの腹膣内(ip)投与により, 腹膣浸出細胞(PEC)に投与翌日に最も増量し5日目迄高値を保った. 一方同量のMMC水溶液(MMC-AQ)投与では, 投与翌日にPEC数は顕著に減少し, その数はMMC-CH投与時の約1/10となった. 2.MMC-CHのip投与によるPMの活性化(殺細胞活性)はMMC-AQ投与の場合とほぼ同等で投与後3日〜5日前後でpeakとなった. MMC-AQ投与ではその後急速に殺細胞活性を失うのに対し, MMC-CH投与では2週間以降迄殺細胞活性が維持された. 3.MMC-CHによるPMの活性化はMMC投与量およびE/Tratioに比例して増大したが, carrageenan投与で消失した. 4.MMC-AQ投与は, MMC-CH投与に比し脾および胸腺重量に顕著な影響をおよぼし, また脾細胞芽球化能を著しく抑制した. 5.MMC-AQのLD50量は8mg/kgであるのに対し, MMC-CHのLD50は18mg/kgであった. 6.MMC-AQに投与後6時間後には全く検出されないのに対し, MMC-CHは投与後72時間でも腹水中に検出された. 7.MMC-CHにより活性化されたPMの殺細胞活性は, ip投与されたMMC濃度によってもたらされる殺細胞活性によりはるかに高かった. 8.MMC-CHを投与されたマウスのPMの超音波破砕上清には, MMCが0.025μg/ml程度検出された. この事から, PMの殺細胞活性の一部は投与されたMMC-CHを貧食したMOが, これをtruget細胞にtransferすることによって生じる可能性も示唆された. 9.免疫賦活剤OK-432とMMC-CHの腹膣内合併投与によりPMの殺細胞活性をMMC-CH単独投与より, より増強出来た. 以上, MMC-CHはMMCの腹膣内での滞留・徐放効果以外にも, 宿主免疫能を損うことなく, 腹膣マクロファージに強い殺細胞活性を生じ, 癌性腹膜炎の治療剤形として非常に適していることが判った.
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