研究概要 |
1.Donor抗原特異的免疫抑制をrecipientにもたらす目的で組織不適合で非血縁間のbeagle成犬を用い, 術前recipientにfractionated lymphoid irradiation(FLI), 150rad/Q, 10日間計1500rad, 最終照射24時間後に骨髄移植(BMT)を施行, 同時に骨髄donorからの腎移植を施行. 術後それぞれazathioprine,lmg/kg/日, cyclosporine(CYA)10mg/kg/日を90日間投与したところ, CYA投与群の方がAZAに比し副作用も少なく長期間の生着を再現性よく得, さらに免疫抑制剤を中止後も免疫不応性を獲得する症例も得た. (Transplantation Proceedfings, 19:632, 1987) 2.本年度はとくにFLI, 腎移植時の腎donorからのBMT, 術後CYAの3著併用群について免疫学的モニタリングを行なったが, 免疫抑制剤投与中止後も生蓄し続ける症例では, 術前redipfentのリンパ球に対するdonorの反応をのみ抑制する抗idiotypic様抗体が術後1〜2ヶ月間で発現することが判明した. また二次リンパ球混合培養抑制法の結果から抗原特異的抑制性細胞が検出された. 一方, 腎移植時にBMTを行わないFLIとCYAの群でも長期生着例が存在したが, この群には前述のような特異的抗体やdonor特異的抑制細胞の発現は認められず, 真のdonor特異免疫不応性にはBMTが重要で役割を果していることが推測された. 3.術後の免疫抑制剤として新しく開発されたFK506, 90日間筋注投与法を検討した. FK506, 0.94mg/kg/日では, 単独投与, FLIとの併用さらにBMTを加えた3著併用では生着延長は全く得られなかったが, FK506の投与量を2倍に, 0.08mg/kg/日に増加させたところ, 3著併用群では生着延長効果が顕著で, 骨髄障害, 肝障害などの副作用はCYAよりも軽度のようであり, 投与を90日間で中止後も生着し続ける症例も得られた. 現在, 症例を重ねてFK506の併用効果およびFK506使用例の各種臓器の組織学的検索を行なっている.
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