(1) 63年度はbeagle成犬を用い術前fractionated lymphoid irradiation(FLI)150rad/日、10日間、腎移植時の腎donorよりの骨髄移入(BMT)、さらに術後に新たにFK506の小量投与(0.08mg/kg/日、90日間筋注)の3者併用を用いたが、腎移植片の長期の生着を再現性よく得ることができた。FKの本実験の投与量ではAZAやCyAに比し骨髄障害や肝障害が殆んどみられなかった。しかし安全性を高めるにはCyAと同様に血中濃度をtrough levelで約0.2ng/mlに調整する必要があった。 (2) FK使用群で注目すべき点は、AZAやCYAでみられなかったFLIとFKのみによる安定した(>90日)腎生着延長効果である。しかし約半数(6例中3例)は90日目でFKを中止後2ー3週目で拒絶されているがさらに検索中である。 (3) FLIと腎移植時のBMT、術後90日間のFK投与(I群)とBMTを施行しないFLIとFKのみの群(II群)の免疫学的検索を行なった。まずI群においてFK投与を中止しても腎移植片が生着し続ける症例において、118日目に骨髄、腎のdonorおよび固定の第3者個体からの皮膚移植を何ら免疫抑制法を用いずに行ったところ、前者は生着し後者は7日で拒絶された。さらに生着した移植片(tolerant skin)をdonorに194日目に戻し再移植したところ、この移植片も生着し続けている。またtolerant skinをrecipientの片側の耳介にautologouslyに移植したところ生着し続けている。一方FLIとFKの併用群(II群)の2例についてみると腎donorよりの皮膚移植を63日目と117日目に行なったがそれぞれ23、21日目で拒絶された。固定の第3者からの皮膚移植片は13。7日目で拒絶された。II群において90日以降FKを中止後も生着する症例について皮膚移植実験を追加中である。二次的に移植された皮膚移植片が生着するか否かが腎移植の生着とどのように関わるのか、さらに骨髄移植を腎移植時に併用したことが皮膚移植片の生着をdonor特異的に左右するのか、さらに症例を増やしてこの免疫不応答性についてin vivo、in vitroのmonitoringを行なう計画である。
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