研究概要 |
mitomycin C(MMC)20mg/bodyを10人の担癌患者に投与し血清中の濃度を経時的に測定した. Gauss-Nowton法により動態を分析し, Bmax×0.84μg/mlAVC.20.2μg:min/mlの値をえた. 腫瘍中のMMCの値は全体に低く, 血中最高濃度との比(T/Bmax)は0.9%であった. ヒト癌(MX-1)を担癌したヌードマウスにMMC3又は6mg/kgを1回腹腔内投与した時のBmaxはそれぞれ0.37μg/ml, 1.09μg/mlであり, AVCは14.7および49.7μg・min/mlであった. 臨床投与量(20mg/body)がヒトに投与された時の薬物動態はマウスに4mg/kg程度を投与した時の動態に類似するものと考えられた. マウスにおける腫瘍内のMMC濃度は低く, T/Bmaxは1.3%であった. adriamycon(ADM)40mg/bodyを5人の担癌患者に投与し, 血清中, 腫瘍中, 腹腔内浸出液中の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した. ADMの腫瘍内濃度(T)は1.4±0.6μg/gとMMCに比して高くその濃度は投与後40〜120分の間では, 投与後の時間に依存して腫瘍内濃度は上昇した. ADMの血清中最高濃度(Bmax)は0.41±0.05μg/ml, AVCは15.8μg・min/mlであり, T/Bmaxは354.6%であった. 腹腔内浸出液中のADM濃度は0.17±0.17μg/mlと低値であった. マウスにヒト乳癌株(MX-1)を担癌させADM8mg/kgを1回静脈内に投与した時のBmaxは1.44μg/ml, AVCは90.6μg・min/mlであり, T/Bmaxは209.1%であった. 以上の成績よりMMCのT/Bmaxはヒトで0.9, マウスで1.3であり, ADMのそれはヒトで354.6, マウスで209.1と互いに近似していることが示された. この事から制癌剤の血清中から腫瘍中への移行度は, MMC, ADMについては種によらず近似しており, ヌードマウスの血清中薬剤濃度をヒト生体内の濃度にあわせることにより, 制癌剤の効果をin vivoで判定することが可能になると考えられた.
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