制癌剤感受性試験の基礎的研究-制癌剤の腫瘍中移行度を中心に-

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62570579
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 久保田 哲朗 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00118944)
• キーワード: 制癌剤濃度 / ヒト癌株 / 臨床手術材料 / ヌ-ドマウス / 比較薬理学的研究

研究概要

DWA2114R(DWA)800mg/m^2を5名の担癌患者に投与し血清中の総プラチン濃度を原子吸光法により経時的に測定した。modified Marquard法により解析した最高血中濃度(Cmax)は24.0±3.8μg/ml,AUCは9146±3394μg.min/ml,腫瘍中濃度と血中最高濃度の比(T/Cmax)は30.7%であった。ヒト乳癌株(MX-1)を担癌したヌ-ドマウスにDWA75mg/kg1回腹腔内投与した時のCmaxは30.3μg/mlであり、AUCは1729μg.min/mlであった。DWAのMX-1腫瘍中最高濃度は9.4μg/gであり、T/Cmaxは31.0%であった。
carboplatin(CBDCA)100mg/m^2を3人の担癌患者に投与し血清中の総プラチン濃度を原子吸光法により経時的に測定した。Gauss-Newton法により解析した最高血中濃度(Cmax)は6.5±0.8μg/ml,AUCは938.5±84.6μg.min/ml,腫瘍中濃度と血中最高濃度の比(T/Cmax)は10.4%であった。ヒト乳癌株(MX-1)を担癌したヌ-ドマウスにCBDCA100mg/kg1回腹腔内投与した時のCmaxは61.2μg/mlであり、AUCは2255μg.min/mlであった。CBDCAのMX-1腫瘍中最高濃度は27.9μg/gであり、T/Cmaxは27.9%であった。
以上の本年度の成績に前年度までの成績を加えて各種抗癌剤のヒトとマウスにおける薬物動態を下記のごとく比較した。マウスとヒトのT/Cmax(%)における相関係数は0.996であり、両者における抗癌剤の腫瘍中移行度は基本的に一定であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] 久保田哲朗,ほか: "^<125>Iモノクロ-ナル抗体NCC-ST-433を用いたヒト肺小細胞癌の免疫画像診断-基礎的検討" 癌と化学療法. 16. 393-398 (1989)
• [文献書誌] Kubota,T.,et al.: "Human breast carcinoma(ZR-75-1)serially transplanted into nude mice-with reference to estradiol dependency and sensitivity to tamoxifen" Japanese Journal of Surgery. 19. 446-451 (1989)
• [文献書誌] Kubota,T.,et al.: "Antitumor activity of KW2149 against human tumor xenografts serially transplanted into nude mice" Japanese Journal of Clinical Oncology. 19. 216-221 (1989)
• [文献書誌] 久保田哲朗,ほか: "腫瘍マ-カ-を用いたtargeting療法-基礎的検討-" カルキノス. 2. 1351-1357 (1989)
• [文献書誌] 久保田哲郎,ほか: "Human tumor clonogenic assayによる術後補助化学療法の選択" カルキノス. 3. 25-31 (1990)
• [文献書誌] Suto,A.,Kubota,T.et al.: "MTT assay with reference to the clinical effect of chemotherapy" Journal of Surgical Onoclogy. 42. 28-32 (1989)
• [文献書誌] Kubota,T.,et al.: "Immune-Deficient Animals in Experimental Medicine" Karger,Basel, 209-211 (1989)