ヌ-ドマウス可移植性ヒト乳癌株MXー1と臨床胃癌症例24例および大腸癌症例8例を対象として、抗癌剤の血清中から腫瘍中への移行を中心に比較薬理学的検討をおこなった。薬剤はmitomycin C(MMC)、adriamycin(ADM)、5ーFU、cisplatin(DDP)、carboplatin(CBDCA)、DWA2114R(DWA)を用い、マウスでは最大耐容量をヒトでは臨床常用量を投与した。薬剤の濃度の測定はMMCではE.coli Bを用いてbioassayにより行い、5ーFUではstaphylococcus aureus ATCC6538Pを用いたbioassayで行った。ADMはhigh performance liquid chromatographyでおこなった。DDP、CBDCA、DWAの測定は原子吸光法によりプラチン量を測定した。各デ-タの薬物動態の解析は、NEC9801パ-ソナルコンピュ-タおよび血中薬物動態解析プログラムを用いて、最小二乗法によりおこなった。マウス、ヒトともにデ-タをone-compartment modelおよびtwo-compartment modelに当てはめ、より適切なモデルを採用した。Cmaxはマウス、ヒトともに比較的低投与群のMMC、ADM、DDPで低く、5ーFU、DWA、CBDCAで高値であった。この3剤のうちCBDCAのCmaxはマウスとヒトで投与量が大きく異なるため他の5剤に比して相関関係からはずれており、このCBDCAを除く5剤のCmaxには0.926と有意の相関関係が認められた(p<0.05)。マウスとヒトにおける6薬剤の血清から腫瘍中への移行率T/CmaxはマウスにおいてもヒトにおいてもADMで著しく高く、3種類のプラチン化合物がこれにつぎ、MMC、5ーFUでは低値であった。6薬剤のマウスとヒトにおけるT/Cmaxの間には相関係数0.996(p<0.001)の有意の相関関係が示された。以上の成績から、ヒト癌ーヌ-ドマウス系を用いた前臨床試験によるdisease oriented Phase II studyの可能性が示された。
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